助教 上村知也
力学ゼミは,剛体多体系の運動方程式とそれによるロボットのモデリングを目的に,全18ページのレジュメを1年かけて輪読するゼミナールです.レジュメの内容は論理的で簡潔にまとめられていますが,行間が広く,一人で通読するのは極めて困難といえます.ゼミでは,この広い行間を埋めながら内容を理解していくという作業がひたすら繰り返されます.
この資料は,ゼミを円滑に進めていくためのカンペ(アンチョコ)として作成しました.予習段階で躓くことがあれば参考にしてください.なお,ゼミの中で解説すべき,極めて重要でありながらレジュメでは省略されている事項については,こちらでも説明しないことにします.
このゼミでは,解析力学の手法によって,剛体多体系の運動方程式を導出し,それによってロボットのモデリングができるようになることを目標とします.すなわち,ロボットのシミュレータプログラムを組むための定式化を行うことが最終の目標となります.
途中でややこしい計算や高度な知識を要することもありますが,緻密に計算を追いテクニックを紹介することや,解析力学から発展していく量子力学への展開など衒学的な内容は求めていませんので注意しましょう.
目標をはっきり据えていないと,計算の展開に拘泥し,結局何をやっていたのか理解できなかったり,モデリングに役立たない定式化にたどり着いたりという事態に陥ってしまうことがあります.このようなことになるのは,シミュレータを組むという大目標を念頭に置けていないことが一つの原因です.
またレジュメの論理展開を無視してしまい,よくわからない論理が展開されることもあります.例えば「したがって」と書かれていれば,前述の内容から次の部分が論理的に帰結されることを表しています.これを逆に読み,特殊な例から一般論を導いたりすることのないように気をつけましょう.
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例:「10を素因数分解すると5x2となる.したがって,10の倍数は5の倍数でもある」
上記の論理を逆に展開してはいけません.間違った結論に達してしまうことがあるからです.
特に,具体例を上げて一般化することはいけません.例えば,「5の倍数の例として,10,50,100などがある.つまり,5の倍数は10の倍数でもあり,『10の倍数は5の倍数である』が証明された」という論理は間違いですね.
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ゴールドスタイン,「古典力学(上)原著第3版」,吉岡書店
斎藤雅彦,「線型代数入門」,東京大学出版会
ホイテッカー,「解析力学<上>」,講談社